ノルディックスキー・ジャンプの塩沢大会が8月27日、新潟県の石打丸山シャンツェ(HS86m)で行い、女子は高梨沙羅(20=クラレ、上川町出身)が優勝した。18日の国際大会では、暑さで汗をかきすぎて体重不足で失格。今大会はその失敗を糧にした。

引用:朝日新聞=優勝した高梨(中央)
高梨の見事な勝利だった。1回目に最長不倒の81.5m、2回目に75mをマークして合計218.5点で表彰台の頂点に立った。2位の勢藤優花(北海道ハイテクAC)に20点以上引き離す「完全試合」だった。勝利を決めたあと、報道陣から前回大会で体重減による失格を質問され、「しっかり学習しているので」と笑顔で語った。
18日の欧州サマーグランプリ(チェコ)では、世界の女王のまさかのミスが世界中に配信された。昨季の2016~17年シーズンは、ワールドカップ(W杯)で男女歴代最多タイの53勝を達成し、2年連続4度目のW杯総合優勝を達成。しかし、国際GPでは猛暑の中、水分補給が足りず、わずか200グラムの体重不足で足をすくわれてしまった。
国際スキー連盟(FIS)の規定では、スキー板に対して選手の体重を厳格に定めている。競技の性質上、スキー板が長く体重が軽いほど飛距離を出せるためだ。このため、選手の過度な減量によって健康を害さないよう、ルールを設けた。例えば身長178cm、体重65kgの選手なら255cmのスキー板を利用できる。
2006年トリノ五輪では、同じ上川町出身の原田雅彦氏(49=雪印監督、全日本スキー連盟理事)も同じミスで失格している。
体重測定を1回→3回に増やし、こまめに水分補給
高梨は使用するスキー板に応じて、制限体重の紙一重の差で調整しており、これが裏目に出た。世界の舞台を制するためには、限界での挑戦を続けているストイックな一面を垣間見せた。高梨の場合、100~200グラムの範囲内でギリギリの戦いをしている。
同じ轍(てつ)を踏まなかった。今大会は気温27度で真夏日にこそならなかったが、日差しが強く、芝からの照り返しもあり、実測以上の体感温度だった。高梨はこれまで、競技開始前には1回にとどめていた体重測定を3回も実施。それぞれ場所を変えながら体重測定をするという念の入れようだった。
体重計を設置する場所の傾き、地面の硬さなどを考慮し、計測の誤差を視野に入れた戦略だった。とはいえ、待機中やわずかな間を見つけては、こまめに水分補給を繰り返し、万全の対策を施した。国際大会の失敗から約10日。世界の女王は、超一流のリカバリーを見せ、新潟の空を誰よりも美しく舞った。