本州最北端の稚内市にある北星学園大(斉藤吉広学長)の入学者が微増している。2018年度の新入生は前年度比4人増の24人。注目は18年度から初めて実施したアトピー治療を支援するための“湯治留学”制度で、隣接する豊富温泉を利用する。今春、カーリング経験者による「スポー特待制度」と合わせて3人の新入生が入学する。
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稚内北星学園大では、2017年夏から“湯治留学”を全国的にアピールしてきた。稚内市と隣接する「豊富温泉」は石油が含まれた源泉で、アトピー性皮膚炎の改善の効果があるとされ、国内外が大勢の湯治客が詰めかけている。
これに着目した同大と豊富町では、事業化に向けて検討を始めた。特に地方都市では全国的に少子高齢化による人口減少が相次いでいる。地域活性化の点からも、若年層の移住・定住は地方創生に欠かせないもので、地域資源を最大限に生かすため、大学と協同で“温泉留学”の事業を立ち上げた。
豊富温泉で湯治をしながら、同大学に通う学生に学費の減免制度を18年度から設けた。稚内市から豊富町までの交通費などの経済的負担を少しでも補うためで、最大で半額になる。減免制度の適用には医師の診断書が必要だ。
【湯治治療の学費減免制度の概要】
稚内市に転入=授業料50%免除
豊富町に転入=授業料20万円免除
【学費の内訳】
▽1年次110万円
入学金:20万円
授業料:70万円→稚内市転入35万円・豊富町転入50万円
教育充実費:20万円
▽2年次以降90万円
授業料:70万円→稚内市転入35万円・豊富町転入50万円
教育充実費:20万円
稚内市に転入すると、授業料が35万円になり、豊富町に転入すると、授業料が50万円に減免される。18年の入学者は地元の豊富町と大阪府から計2人が入学する。もう一人が南富良野町からのカーリングの「スポーツ特待生」だ。
豊富温泉のある豊富町では、町を挙げて“湯治留学”を支援する制度を2017年度から立ち上げた。アトピーや皮膚疾患などの温泉治療で1年以上、同町で暮らすことが条件だ。支援は住宅費の一部を補助。対象の子どもの「ふれあいセンター」の入浴料が免除になる。同温泉は日本最北の温泉郷として知られる。
豊富温泉では、アトピーや皮膚疾患を持つ子どもが、全国から長期的に湯治治療をしている。夏・冬の長期休みを利用するケースだ。町内には小・中・高校(全日制普通科)が1校ずつあり、兜沼地区にも小中併設校が1校ある。“湯治留学”への受け入れ体制も整っている。
2017年7月4日には、豊富温泉ふれあいセンター・温泉自然観察館が「温泉利用型健康増進施設」に、北海道で初めて認定された。厚生労働省による一定基準を満たすなどの必要条件をクリアしなければならない。メリットとして、温泉治療で必要な要件を満たした湯治客は入浴料、施設までの往復交通費が、所得税の医療費控除の対象になる。
同町には豊富温泉コンシェルジュもいて、さまざまな相談を受け付けている。留学や移住で温泉治療をする場合、住居や編入学まで幅広いアドバイスをしてくれる。
▽豊富町メモ
位置:北海道北部の日本海側にある
人口:3993人(2018年2月末現在)
特徴:酪農が盛んで人口の約4倍の1万6000頭の乳牛を飼育
特産:「豊富牛乳」などの乳製品
交通:札幌から高速バスで5時間