2026年冬季五輪・パラリンピックの招致を目指している札幌市の秋元克広市長は11月14日、スピードスケート会場を帯広市の「明治北海道十勝オーバル」を中心に検討する方針を明かした。札幌市南区の道立真駒内屋外競技場が、道から建て替えが困難なことが伝えられたからだ。
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真駒内屋外競技場の建て替えが困難
秋元市長は14日の記者会見で「IOC(国際オリンピック委員会)との対話ステージに参画することになった場合、帯広の十勝オーバルをスピードスケートの会場に最優先して検討していく」と述べた。
その理由として道から、真駒内屋外競技場の建て替えにばく大な費用がかかることが伝えられたと明かした。さらに、既存の施設を有効活用して五輪開催の費用を圧縮して、五輪後に負の遺産にならないような大会運営を目指すためだ。
札幌市では五輪開催の経費を4500億円前後と見込んでいる。20年東京五輪・パラリンピックでは、巨額の開催経費が問題視されており、これに配慮した形だ。市民や道民の賛同を得るために、経費の面を慎重に考えたうえでの分離開催を検討するに至った。
札幌市が11月8日に日本オリンピック委員会(JOC)に提出した開催概要計画書によると、スピードスケート会場は真駒内屋外競技場と明治北海道十勝オーバルの2会場が候補地であると記載している。
十勝オーバルの開催検討で問題点も浮上
秋元市長の方針を受けて、帯広市の関係者は歓迎の意向を示している。その一方で問題点もある。十勝オーバルの観客席の数は約1000で、IOCが定める基準が6000以上。現状であと5000席を増設するのは建物の構造上、物理的に不可能だ。
IOCでは、ばく大な経費がかかる五輪開催の観点から、既存施設の有効活用を優先的にするよう訴えている。観客席の基準緩和も視野に入れているが、1000席ではあまりに少ない。今後、札幌市と帯広市、IOCでどのような打開策を講じるか注目される。
一方で札幌市のスピードスケート関係者にとって、落胆の色を隠せない。札幌スケート連盟の関係者は「スピードスケート会場を帯広にすることについて、一切の協議がなかった。札幌市の子どもたちの目標や育成にとって残念なこと」と困惑している。
真駒内屋外競技場のある真駒内公園は、本拠地を札幌ドームから移転する計画を進めているプロ野球・北海道日本ハムファイターズの新球場の候補地として浮上。札幌市では五輪会場としての活用を優先し、球団に候補地の提案をしていないとしている。
札幌市では1972年にアジアで初の冬季五輪を開催した。2度目の五輪開催に向けて、今後も紆余曲折がありそうだ。