地方議員になる方法は、簡単な条件さえ満たせばOKだ。都道府県議は金銭的なハードルが高いが、市町村議なら意外とそうでもない。20代の若者から転職を視野に入れる社会人まで誰でも平等に地方議員になれる可能性がある。それが、民主主義の大きな特徴だ。2019年の統一地方選に向けて、地方議員を目指してみてはどうだろうか。
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目次
被選挙権25歳以上、選挙区に3カ月以上の居住歴でOK
地方議員は、衆参両議員の国政選挙に比べ、非常の敷居が低い。国政の場合、大きな利権や国を左右する政策などに関与するため、政党に所属することが当選の近道になる。地方議員の場合は、そのほとんどが無所属の出馬で大丈夫だ。
選挙には「地盤」「看板」「鞄」の「3バン」が必要と言われている。もちろん、当選するためには「3バン」が大切になる。とはいえ、最近では人口減少や価値観の多様化など、必ずしも当てはまらない。
財政支援団体の指定を受けた北海道夕張市がいい例だ。2011年の市長選では、埼玉県春日部市生まれ、三郷市育ちの鈴木直道氏が当時30歳1カ月で初当選した。学歴は家庭の事情で、都庁に勤務しながら法政大の2部を卒業した。
鈴木市長は08年1月に都職員として、夕張市に派遣されていた。地盤も看板も鞄もない状態で、市長選では自民・公明・みんなの党推薦の元衆院議員らを破っている。首長選でこんな感じなので、地方議員選ではもっと敷居が低くなる。
【地方議員になる2つの条件】
・日本国民で満25歳以上
・3カ月以上、立候補する選挙区の市町村に住んでいること
条件はたったこれだけだ。首長(市長、町長、村長)の場合、居住条件は適用されない。A市に在住していてもB市の市長になることができる。ちなみに参院議員と知事の被選挙権は30歳以上となる。
町議選や村議選なら供託金が不要
実際に立候補を考えると、どうしても気になるのが選挙費用だ。まず、選挙にとって欠かせない費用が供託金だ。一定の得票数に達すると全額返還されるが、予納しなければならないので、あらかじめ用立てておく必要がある。
地方選の供託金は30万~300万円。首長は50万~240万円、市議や都道府県議が30万~60万円となる。市議選の出馬には、まとまった金額が必要だが、町村議選の出馬は供託金の必要がないのがポイントだ。
【地方選挙の供託金に関する条件等】
(2014年7月1日現在の全国町村議会議長会調べ)
選挙の種類 | 供託金 | 供託金が没収される条件 |
都道府県知事 | 300万円 | 有効得票総数÷10 |
都道府県議 | 60万円 | 有効得票総数÷定数の10分の1 |
指定都市の長 | 240万円 | 有効得票総数÷10 |
指定都市議員 | 50万円 | 有効得票総数÷定数の10分の1 |
その他の市区長 | 100万円 | 有効得票総数÷10 |
その他の市区議員 | 30万円 | 有効得票総数÷定数の10分の1 |
町村長 | 50万円 | 有効得票総数÷10 |
町村議員 | 不要 | - |
例えば、有効得票総数が1万票なら1000票が、供託金を没収される分岐点となる。供託金は選挙による売名行為などを防ぐために、公職選挙法で定められている。
このほか、選挙ビラ・ポスター、事務所経費、人件費など、市議選レベルで50万円以上かかるとされる。ところが、ボランティアや格安印刷などで10万~30万円で当選している市議も数多い。自治体によっては公費負担をしてくれるケースもある。
気になる議員報酬はまさにピンキリ
就職や転職に地方議員を検討する中、重要なのは議員報酬だ。ある程度の稼ぎがなければ生活ができない。町村議は、市議に比べて報酬が低額なので兼業者がほとんど。例えば農業や自営業者などだ。ただ、町議でも報酬が高めなところもある。
【月額報酬が30万円以上の全国の町村議】
(2014年7月1日現在の全国町村議長会調べ)
順位 | 議員報酬 | 自治体名 |
1 | 40万円 | 神奈川県葉山町 |
2 | 36万7000円 | 茨城県東海村 |
3 | 34万5000円 | 東京都日の出町 |
4 | 34万4000円 | 福岡県苅田町 |
5 | 34万円 | 東京都瑞穂町 |
6 | 33万9000円 | 神奈川県寒川町 |
7 | 33万3200円 | 神奈川県愛川町 |
8 | 33万円 | 大阪府島本町 |
9 | 32万3000円 | 大阪府河南町 |
10 | 32万2000円 | 大分県日出町 |
11 | 32万0000円 | 神奈川県湯河原町 |
32万0000円 | 大阪府太子町 | |
32万0000円 | 奈良県田原本町 | |
32万0000円 | 香川県宇多津町 | |
32万0000円 | 香川県綾川町 | |
16 | 31万5000円 | 神奈川県大磯町 |
17 | 31万3000円 | 宮城県柴田町 |
31万3000円 | 茨城県阿見町 | |
19 | 31万0000円 | 茨木県茨城町 |
31万0000円 | 栃木県壬生町 | |
21 | 30万6000円 | 神奈川県箱根町 |
22 | 30万3000円 | 愛知県大口町 |
30万3000円 | 香川県多度津町 | |
24 | 30万円 | 東京都奥多摩町 |
30万円 | 愛知県蟹江町 | |
30万円 | 愛知県幸田町 | |
30万円 | 三重県菰野町 | |
30万円 | 兵庫県猪名川町 | |
30万円 | 奈良県広陵町 | |
30万円 | 福岡県那珂川町 |
全国には900超の町村がある。町議の月額報酬は20万~25万円が多い。中でも全国の30町村で議員報酬が30万円超えている。
神奈川県大磯町議の年収を例にすると、次のようになる。月額報酬が30万円以上なら兼業することなく、地方議員のみで生活ができるレベルともいえる。
月額報酬:31万5000×12カ月分=378万円
期末手当(6月):76万1985円
期末手当(12月):78万570円
政務活動費:年額12万円
合計544万2555円
町村議員の当選確率は80%超でかなり高い
2018年の町村議選を見ると、軒並み当選確率が80%超となっている。定数以内の立候補者の無投票当選のケースも多い。
【2018年1月の町村議選の状況】
▽1月21日投開票
中土佐町議選(高知県):定数12←立候補者14=当選率85.71%
(議員報酬月額18万2000円)
東洋町議選(高知県):定数9←立候補者9=無投票
(同16万3000円)
仁淀川町議選(高知県):定数10←立候補者11=当選率90.91%
(同16万5000円)
美里町議選(宮城県):定数16←立候補者17=当選率94.11%
(同23万円)
▽1月28日投開票
大台町議選(三重県):定数11←立候補者14=当選率78.57%
(同17万7000円)
立山町議選(富山県):定数14←立候補者16=当選率87.50%
(同29万円)
琴浦町議選(鳥取県):定数16←立候補者17=当選率94.11%
(同21万7000円)
有田川町議選(和歌山県):定数16←立候補者18=当選率93.75%
(同23万円)
伊仙町議選(鹿児島県):定数14←立候補者17=当選率82.35%
(同23万2000円)
東洋町議選のように無投票のケースも多いほか、定数に満たないこともある。4月29日が投開票予定だった岡山県矢掛町議選は、定数12に対して立候補者が10人。同日執行の町長選に町議2人が立候補したためだ。
選挙権が18歳になり、立候補者も若返りを
2015年の統一地方選では、373町村議選中、2割強に当たる89町議選が無投票だった。このうち4町議選が定数割れ。少子高齢化の影響で、地方の過疎化が進み、地方議員のなり手も減っている。
2017年6月には、高知県大川村が注目を集めた。人口約400人の小さな村とあって、村議会に代わる「村民総会」の設置を検討した。最終的には見送られたが、全国の町村議員は60歳を超える議員の割合が75%超で、今後の検討課題になっている。
選挙権が18歳と若返り、立候補者も同じく若返ることが、疲弊する地方自治を再生するきっかけになるかもしれない。