サッカーの北海道十勝スカイアースのJリーグ参入を本格的に目指すシーズンが始まった。5月13日、第41回北海道サッカーリーグが開幕した。今季は新潟でプレーした元Jリーガーの梅山修監督を迎え、Jリーグ経験者ら計14選手が新加入して、25人体制でチームを刷新。最短で2019年のJFL昇格、20年のJ3昇格を目指す。北海道で発足したクラブが、JFLやJリーグに昇格するのは初めてとなる。
スポンサーリンク
目次
2018年北海道十勝スカイアースの結果速報
【第41回北海サッカーリーグ】(得点は十勝のみ)
[第1節]=5月13日(幕別公園陸上競技場)
北海道十勝スカイアース2(2-0 0-1)1VERDELAZZO旭川
(勝ち点3) (勝ち点0)
▽得点 渋谷、松尾
北海道十勝スカイアース5(2-0 3-1)1札大GP
(勝ち点6) (勝ち点0)
▽得点 山下2、松尾2、長野 [第3節]=6月2日(苫小牧緑ヶ丘公園サッカー場=人工芝)
北海道十勝スカイアース4(0-1 4-0)1トヨタ自動車北海道
(勝ち点9) (勝ち点6)
▽得点 松尾、山下、高橋2 [第4節]=6月3日(新日鐵住金室蘭グラウンド)
北海道十勝スカイアース5(1-0 4-0)0新日鐵住金室蘭
(勝ち点12) (勝ち点6)
▽得点 松尾2、高橋、皆上、渋谷 [第5節]=6月10日(帯広の森球技場)
北海道十勝スカイアース3(1-1 2-0)1ノルブリッツ北海道
(勝ち点15) (勝ち点12)
▽得点 山下2、関河 [第6節]=6月24日(SSAP)
北海道十勝スカイアース2(1-0 1-0)2札幌蹴球団
(勝ち点18) (勝ち点9)
▽得点 渋谷2 [第7節]=6月30日(帯広の森球技場)
北海道十勝スカイアース7(3―0 4-2)2北蹴会岩見沢
(勝ち点21) (勝ち点9)
▽得点 皆上、松尾2、渋谷、高木、山下、黒川
北海道サッカーリーグは前半戦の全日程が終了し、北海道十勝スカイアースが1位となり、9月30日から開催する「福井しあわせ元気国体」(福井県坂井市)の出場権を獲得した。
[第8節]=7月1日(帯広の森球技場)北海道十勝スカイアース8(2-0 6-0)0トヨタ自動車北海道
(勝ち点24) (勝ち点6)
▽得点 高木、山下3、松尾2、高橋2
FW山下亮介が今季チーム初のハットトリックを達成。8得点は今季のチーム最多得点で、今季3度目の完封勝利を飾った。
[第9節]=7月15日(旭川・東光スポーツ公園球技場)北海道十勝スカイアース6(1-0 5-0)0VERDELAZZO旭川
(勝ち点27) (勝ち点3)
▽得点 林、松尾2、長野、渋谷、皆上
Jリーグ経験3人が新加入してチームを強化
今季の十勝スカイアースには、Jリーグのクラブに所属した3選手が新加入した。守備陣を統制するのが、コーチ兼任でベテランDF長野聡。J1通算3試合、J2 通算166試合に出場したキャリアの持ち主だ。
長野は2005~06年に福岡のJ1昇格を経験、06年J2東京V、07~09年J2福岡、10~12年J2北九州でプレー。13年にはタイリーグに活躍の場を移し、ナコーンラーチャシーマFCで16年までプレーした。17年には同リーグのバンコクFCに移籍した。
MFにはJ2東京Vから期限付きした渋谷亮が、新天地で再起をかける。15年に東京Vに新加入後、16年鈴鹿アンリミテッドFC(東海リーグ1部)、17年ラインメール青森(JFL)を渡り歩いた。けがで本領を発揮できずにいた思いを新天地で晴らす。
ブラジル出身の2選手にも注目だ。DFラファエル カエタノはJ2岐阜の所属歴がある。FWファビオ アウグストはJ1湘南からオファーがあったが、これを固辞して北海道十勝スカイアース入りを決断。ともに、渋谷幕張高(千葉市)出身で、日本語でのコミュニケーションに支障はない。
【北海道十勝スカイアース選手・スタッフ】
代表:藤川孝幸=1962年10月10日生まれ・神奈川県出身
スーパーバイザー:城彰二=1975年6月17日生まれ・室蘭市出身
監督:梅山修=1973年8月16日生まれ・埼玉県出身
コーチ:長野聡
主将:松尾雄斗
運営担当:中村吉克=1981年10月2日・帯広市出身
※赤マーカー=Jリーグクラブ所属歴のある選手
※黄マーカー=2018年新加入選手
背番号 | 位置 | 名前 | 生年月日 | 出身 | 出身校 | 前所属 | 身長・体重
(cm) (kg) |
1 | GK | 竹内 良成 | 1995.10.19 | 栃木県 | 作新学園高 | アルティスタ東御 | 185・75 |
21 | GK | 菅原 大道 | 1995.8.10 | 秋田県 | 仙台大 | 仙台大 | 188・80 |
24 | GK | 石川 琢磨 | 1993.9.21 | 岩見沢市 | 中央大 | HBO東京 | 190・95 |
26 | GK | 坂東 俊輔 | 2000.1.28 | 音更町 | 帯広北高 | 帯広北高 | 173・63 |
3 | DF | ラファエル カエタノ | 1991.7.12 | ブラジル | 渋谷幕張高 | J.FC MIYAZAKI | 181・69 |
5 | DF | 長野 聡 | 1982.8.2 | 福岡県 | 福岡大 | ナコーンラーチャシーマFC | 185・77
|
16 | DF | 浅井 達郎 | 1986.7.3 | 恵庭市 | 星槎道都大 | やきとり工場 | 178・77 |
17 | DF | 吉田 哲登 | 1999.6.29 | 帯広市 | 帯広北高 | 帯広北高 | 181・70 |
18 | DF | 丸尾 祐太 | 1994.1.28 | 札幌市 | 福岡大 | 福岡大 | 178・68 |
28 | DF | 西島 大介 | 1989.7.18 | 三重県 | 中部大 | 松江シティFC | 169・63 |
2 | MF | 関河 奨人 | 1995.12.8 | 埼玉県 | 仙台大 | 仙台大 | 168・65 |
4 | MF | 林 洋毅 | 1995.7.19 | 埼玉県 | 仙台大 | 仙台大 | 171・65 |
6 | MF | 板垣 和之 | 1987.3.1 | 札幌市 | 札幌大 | 六花亭マルセイズFC | 173・69 |
7 | DF | 黒川 聖平 | 1992.4.6 | 帯広市 | 帯広北高 | 六花亭マルセイズFC | 174・63 |
8 | MF | 高木 俊輝 | 1995.11.9 | 広島県 | JAPANサッカーカレッジ | JAPANサッカーカレッジ | 172・69 |
10 | MF | 田中 基樹 | 1982.5.24 | 池田町 | 国士舘大 | 蹴鞠会 | 178・69 |
13 | MF | 餌取 伸哉 | 1986.9.3 | 帯広市 | 室蘭工大 | 帯広北クラブ | 178・67 |
22 | MF | 松尾 雄斗 | 1995.11.13 | 帯広市 | 阪南大 | 阪南大 | 164・59 |
23 | MF | 渋谷 亮 | 1992.7.25 | 東京都 | 中央大 | ラインメール青森FC | 168・55 |
9 | FW | 山下 亮介 | 1985.4.22 | 函館市 | 国士舘大 | 東京23FC | 182・69 |
11 | FW | 栗谷 昌宏 | 1970.12.10 | 芽室町 | 室蘭工大 | ルード・ボーイズ | 169・61 |
14 | FW | 高橋 賢也 | 1998.6.16 | 帯広市 | 清水高 | 清水高 | 180・70 |
15 | FW | ファビオ アウグスト | 1998.11.19 | ブラジル | 渋谷幕張高 | 渋谷幕張高 | 180・84 |
25 | FW | 皆上 弦輝 | 1995.6.16 | 帯広市 | 城西国際大 | 城西国際大 | 180・74 |
27 | FW | 荒木 一真 | 1993.4.6 | 北見市 | 帯広北高 | 帯広北高 | 170・67 |
今季の目標はJFL昇格
北海道十勝スカイアースは、昨季の道リーグで3年ぶり2度目の優勝に輝いた。全国舞台では愛媛国体で初戦敗退。道リーグの優勝で出場権を獲得した、JFL昇格を懸けた全国地域チャンピオンズリーグ(CL)は、1次ラウンドで3戦全敗した。
昨季はJFLへの入会希望を出しておらず、仮に全国地域CLで昇格条件の2位以内に入ってもJFL昇格の基準を満たしていなかった。今季はJFLへ入会希望を申請し、万全の体制で昇格を見据える。
18年は道リーグで優勝し、11月の全国地域CLで2位以内に入ると、19年にJFLの舞台で戦うことになる。19年のJFLで4位以内に入り、所定の条件をクリアすると、20年にJ3昇格が決まる。J3 の昇格にはクラブの健全経営はもちろん、運営会社の法人化なども必要だ。
【JFL→J3昇格の主な条件】
・JFL4位以内でかつ百年構想クラブの上位2クラブ
・J3クラブライセンスを取得している
1.入場者平均が2000人超
2.年間事業収入が1億5000万円以上
3.ホームスタジアムは5000人以上の収容など
【日本のサッカーのカテゴリー】※2018年
▽プロリーグ
J1=18チーム
J2=22チーム
J3=17チーム
▽アマチュアリーグ
JFL=16チーム
全国地域CL=12チーム
全国地域リーグ
【第41回北海道サッカーリーグ日程】
節 | 日時 | 相手 | 会場 |
1 | 5.13・10時 | VERDELAZZO旭川 | 幕別町運動公園陸上競技場 |
2 | 5.20・13時 | 札大GP | 札幌厚別公園競技場 |
3 | 6.2・9時半 | トヨタ自動車北海道 | 苫小牧緑ケ丘公園 |
4 | 6.3・10時 | 新日鉄住金室蘭 | 新日鉄住金室蘭G |
5 | 6.10・10時 | ノルブリッツ北海道FC | 帯広の森球技場 |
6 | 6.24・10時 | 札幌蹴球団 | SSAP |
7 | 6.30・10時 | 北蹴会岩見沢 | 帯広の森球技場 |
8 | 7.1・10時 | トヨタ自動車北海道 | 帯広の森球技場 |
9 | 7.15・10時 | VERDELAZZO旭川 | 旭川東光スポーツ公園 |
10 | 8.26・10時 | 札大GP | 幕別町運動公園陸上競技場 |
11 | 9.2・10時 | 北蹴会岩見沢 | 岩見沢東山公園 |
12 | 9.9・13時 | ノルブリッツ北海道FC | SSAP |
13 | 9.16・10時 | 新日鉄住金室蘭 | 帯広の森球技場 |
14 | 9.23・10時 | 札幌蹴球団 | 帯広の森球技場 |
※SSAP=札幌サッカーアミューズメントパーク
十勝全体でクラブを支援する土壌
北海道十勝スカイアースは、世界的な規模を誇る農業・酪農王国の十勝全域で強力に支えている。十勝の食料自給率は1200%超(カロリーベース)で、国内で追随する地域がない。北海道で約200%(同)、日本で約40%(同)なので、いかに突出しているかが分かる。
農水省によると、日本の畑の面積207万haのうち12%を占める25万haが十勝の畑だ。この巨大な大地の恵みが、十勝スカイアースのJFL昇格やJリーグ昇格の大きな原動力になる。
スポンサーはクラブの運営母体・リーフラス(東京)などを除き、十勝色を前面に出している。メインとなるユニホームなどのスポンサーが7社、その他に十勝の地元企業を中心に25社がクラブを支えている。
【2018年北海道十勝スカイアースの主なスポンサー】
▽ユニホームスポンサー
胸:よつ葉乳業(登記上の本社は音更町)=乳業
背中:JOY FIT(帯広市)=スポーツジム
背中裾:リーフラス(東京)=スポーツ事業
袖:ノベルズ(上士幌町)=酪農業
短パン:十勝毎日新聞社(帯広市)=地方新聞社
▽その他のスポンサー
・Spazio(東京)=サッカーウエア販売
・西鉄旅行SPORTS(福岡)=旅行代理店
酪農・農業リーガーとして地元に融合
現在、北海道十勝スカイアースでプロ契約をしている選手は長野、ラファエル カエタノ、渋谷亮、ファビオ アウグストの4選手。そのほかの選手は、地元で就業しながら活動をしている。
帯広市以平(いたいら)町では、ナガイモなどの複数の栽培農家が共同で出資して雇用を確保する「地域連携型雇用」を開始。第1号として帯広市出身で、18年春に阪南大を卒業して新加入した松尾が農作業に従事している。
チームスポンサーでもある「アグリファッショングループ」(帯広市)が代表として雇用し、繁忙期などの状況に応じて人材を派遣する。地域色を生かした仕事をして、収入を得ながら選手として活動するスキームは、今後のスポーツチーム運営のモデルケースになりそうだ。
農作業のほか、酪農業では搾乳や家畜の世話なども行う。十勝に根差すクラブだからこその地域の特色を生かし、選手を地元に融合させた取り組みとして注目を集める。
北海道コンサドーレ札幌との共存共栄
北海道には、2018年の舞台をJ1で戦っている北海道コンサドーレ札幌がある。95年に神奈川県川崎市にあったチームを札幌市に移転。97年の旧JFLで優勝して、98年に初のJリーグ(当時は1部制で現在のJ1相当)昇格を決めた。
札幌では北海道十勝スカイアースへの協力体制なども惜しまない。例えば道内では、実力差がありすぎるため、練習試合の相手がいない。このため、練習試合などで協力、クラブ運営のノウハウについても、野々村芳和社長は要請があれば協力することを明かしている。
北海道サッカー協会でも、道内2チーム目のJFL以上のチーム誕生を願っている。札幌が98年のJ昇格を決めた後、20年以上にわたり、希望している。北海道の広域性を考えれば、サッカー人口のすそ野拡大に向けて必要としている。今季のJ1中断期間中にも練習試合を行う可能性もある。
まとめ
北海道十勝スカイアースが今季見据えているのは、JFL昇格を決定する全国地域CLだ。道リーグの連覇は当然で、ここが単なる通過点であることをチーム全体で理解している。
ただし、全国的にレベルが極端に低い道リーグの中で、チームの向上を図るのは難しい。札幌をはじめ、Jリーグ中断期間中に本道で合宿を行うJチームとの積極的な対外試合などで実力を養うのも一つの手だ。
北海道十勝スカイアースの藤川代表は、元ヴェルディ川崎で一時代を築いたGK。4月に帯広市内で行った新チーム発表で、末期の胃がんであることを告白した。チームは最速のJ昇格を目指し、今季の戦いに臨んでいる。