任期満了に伴う北海道知事選挙(3月21日告示、4月7日投開票)は、事実上の与野党対決となる。鈴木直道夕張市長(37)=自民、公明推薦=と、石川知裕元衆院議員(45)=立憲民主、国民民主、共産など=の16年ぶりの新人同士の一騎打ちが確定。2月23日には両氏が札幌市内で決起集会を開き、事実上の選挙戦が始まった。
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目次
北海道知事選挙2019の鈴木、石川両支持母体が決起集会
2月23日に鈴木直道、石川知裕両支持母体が共に、札幌市内で総決起集会を開いた。鈴木氏はススキノに近い「札幌パークホテル」、石川氏がJR札幌駅に近い「ホテルポールスター札幌」で、支持政党や支援者が集結して必勝を誓った。
鈴木氏は、4月の統一地方選に向けた自民党道連の総決起集会に出席。道議選や札幌市議選の候補予定者や支援者ら約1000人が集まった。北海道町村会とも距離感を縮め、「躍動する北海道、誰もが安心して暮らせる北海道をつくりたい」と語った。
石川氏は立憲民主、国民民主、連合北海道、北海道農民政治力会議の4者による合同選対本部の設立総会に出席。各政党・団体や支援者ら約300人が集まった。石川氏は「北海道を良くしていくのは誰か。これだけを考えていただきたい」と強く訴えた。
北海道知事選挙2019の鈴木直道氏のプロフィール
◇鈴木 直道(すずき・なおみち)氏
埼玉県立三郷高在学時に両親が離婚して、母子家庭で育つ。東京都庁職員となり、2000年4月に法大2部に進学。ボクシング部に所属し、02年国体の東京都大会でフェザー級2位に入る。08年に財政破綻した夕張市へ出向。10年に都庁を退職して、11年の夕張市長選で初当選した。15年に再選。夕張市長は2月28日付で辞職する。
▽鈴木直道氏プロフィール
生年月日 | 1981年3月14日 |
出身地 | 埼玉県三郷市 |
出身校 | 法大法学部 |
主な経歴 | 夕張市長(2期)、東京都庁職員 |
家族 | 妻 |
▽経歴
- 1999年 東京都庁に採用される
- 2004年 法大卒業
- 2008年 都庁から夕張市へ派遣される
- 2010年 内閣府地域主権戦略室へ出向
- 2010年 夕張市行政参与に就任
- 2011年 夕張市長選で初当選
- 2015年 夕張市長選で再選
北海道知事選挙2019の石川知裕氏のプロフィール
◇石川 知裕(いしかわ・ともひろ)氏
早大商学部在学中に小沢一郎氏の書生を務め、卒業後は私設秘書になった。2005年衆院選(北海道11区)から出馬し、繰り上げで初当選。09年には前回敗れた中川昭一氏(故人)を破って再選した。10年1月に小沢氏の資金管理団体「陸山会」で政治資金規正法違反で逮捕され、14年に最高裁で有罪が確定し、3年間の公民権停止となった。
▽石川知裕氏プロフィール
生年月日 | 1973年6月18日 |
出身地 | 北海道足寄町 |
出身校 | 法大大学院修了 |
主な経歴 | 衆院議員(3選) |
家族 | 香織夫人(衆院議員、道11区)、長男と長女 |
▽経歴
- 2005年 衆院選で繰り上げ当選
- 2009年 衆院選で再選
- 2012年 BS11のアナウンサーだった香織夫人と結婚
- 2012年 衆院選で復活当選して3選
- 2014年 政治資金規正法違反で最高裁で有罪が確定
- 2016年 法大大学院政治学研究科修了
- 2017年 衆院選は公民権停止のため、香織夫人が立候補(道11区)して初当選
北海道知事選挙2019 鈴木・石川両氏の主な政策
北海道内を取り巻く大きな課題として①泊原発の再稼働の是非②JR北海道の路線見直し問題③カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致-の3点が、北海道知事選の最大の争点になっている。
鈴木直道、石川知裕両氏らの政策や主張の中で、これら3点の問題は有権者にとって大きな注目ポイントだ。両氏とも考え方や主張に明確な差があり、道内の有権者にとって支持するか否かの大きな判断材料にもなっている。
加えて、北海道では政令市の札幌を除き、全国の自治体の中でもワースト級の人口減少が続く。深刻な少子高齢化に陥っている。九州と四国を加えた面積よりも広大なため、地域間格差も深刻な問題だ。
▽鈴木直道・石川知裕両氏の主張の相違
鈴木氏 | 石川氏 | |
泊原発再稼働 | 【明確な言及をしていない】 | 【反対】原発はみんな反対している。再生可能なエネルギーへ転換 |
JR路線見直し | 夕張では攻めの廃線で7億5千万円の支援金を引き出した | 廃線するのは簡単。鉄路を残すことを検討したい |
IR誘致の是非 | 【賛成】経済的にプラスに働く。観光客増加につながる | 【反対】カジノよりも子どもたちが喜ぶ施設を造りたい |
北海道知事選挙2019 与野党の候補者擁立の迷走
北海道知事選をめぐっては、与野党とも候補者擁立に迷走した経緯がある。自民党では候補者一本化に向け、党本部と道連で足並みがそろわなかった。野党では候補者擁立に向けて、2018年末から難航していた。
▽自民党道連
自民党は菅偉偉官房長官(70)が、法大の後輩で同じく苦学生として同じような道を歩んできた鈴木直道氏を公私にわたって支援。菅氏と道連の吉川貴盛会長(68)=農林水産相=は、1996年の衆院選初当選の同期で、深い関係を築いている。
自民党道連では、北海道知事選の候補者擁立に向けて、官邸の意向を強く受けた形が見え隠れした。鈴木氏ありきの候補者擁立に向け、道連の道議や道内経済界が強く反発。国土交通省の和泉晶裕北海道局長(57)=札幌出身、北大院卒=の擁立に向け、保守分裂の可能性が高まっていた。
和泉氏が出馬に難色を示す中、2月1日に鈴木氏が知事選出馬の「フライング」表明をした。道連が鈴木、和泉両氏に最終的な意向確認をする前だった。「反鈴木派」の喜多龍一道議(66)=十勝=らが、橋本聖子参院議員会長(54)を担ぎ出す動きもあった。
▽立憲民主道連など
立憲民主党道連、国民民主党道連、連合北海道、北海道農民政治力会議などの4者では、2018年夏ごろから、北海道知事選の候補者擁立に向けて水面下で動いていた。その筆頭が逢坂誠二衆院議員(59)=北海道8区=だった。ニセコ町長を3期務めるなど、道内を知る野党候補の最有力だった。
逢坂氏は鈴木直道氏の知事選出馬の動向もあり、出馬をかたくなに固辞。19年1月1日に逢坂氏の函館市の事務所に、4者の代表が出向いて最後の出馬要請をしたが、厳しい口調で断られた。この間、2003年の道知事選に出馬した鉢呂吉雄参院議員(71)=元経産相=にも出馬を打診していた。
4者では候補者擁立を一時、白紙に戻して検討を始めた。当時、石川知裕氏は、地元の足寄町長選への出馬要請を地元の友人・知人から受けていた。国政復帰を目指していた石川氏が町長選出馬を検討する中、立憲民主党道連の佐々木隆博代表から知事選出馬の打診を受けて受諾した。
北海道知事選2019 有権者の鈴木・石川両氏の考え
今回の北海道知事選は、現職の高橋はるみ氏(65)が初当選した2003年以来、16年ぶりの新人対決になることが濃厚だ。さらに、4月の第19回統一地方選の知事選は北海道を含む9道県で行われ、与野党対決の構図になりそうなのが北海道だけ。全国的に注目度の高い選挙になりそうだ。
有権者の中には鈴木氏に対して「原発再稼働についての言及がなく、主張していることは抽象的」との声も出ている。官邸主導の道政になりかねないなどの危機感も募らせている。道政は国からのトップダウンになるとの見方が圧倒的だ。
石川氏に対しては、政治資金規正法違反で有罪判決が確定しているのが、ネガティブなイメージとなっている。「有罪判決を受けた人が知事になるのに抵抗感がある」という声も大きい。国政と違い、道政は細かい視点が必要との意見もある。
北海道知事選2019 徳川家広、佐藤のりゆき両氏は不出馬
北海道知事選は鈴木直道、石川知裕両氏の与野党一騎打ちが濃厚だ。一時、出馬を検討していた徳川家19代で政治経済評論家の徳川家広氏(54)は、2月20日に札幌市内のホテルで不出馬を表明した。
もう一人は、前回2015年の道知事選に出馬して114万票を獲得した佐藤のりゆき氏(69)だ。市民団体が出馬を要請しているが、資金面や出馬に向けた体制づくりが間に合わず、2月26日に不出馬を明らかにした。
北海道知事選は、鈴木氏の支持勢力が固い印象だが、石川氏の主張や政策に共感する支持層も出ている。
2018年9月の沖縄県知事選も同じような与野党対立の構図だった。元衆院議員の玉城デニー氏(59)=立憲、国民、共産、自由、社民、沖縄社大推薦=のオール沖縄が、元宜野湾市長の佐藤眞淳氏(54)=自民、公明、維新、希望=を下して、新人対決を制した。
北海道知事選挙2019の第一声は北海道胆振東部地震の被災地
鈴木直道、石川知裕両氏とも、3月21日の告示日の第一声は、2018年9月6日に発生した「北海道胆振東部地震」の被災地を検討している。死者42人(札幌市の関連死1人を含む)を出し、北海道で初めて最大震度7を観測。今なお、避難所暮らしの町民も多数いる。
両陣営では、被害が大きかった胆振管内厚真、安平両町で第一声を上げて、選挙戦を本格的にスタートさせる考えだ。
2月21日には同所で胆振東部地震に関係する最大震度6弱の地震があった。真っ先に駆け付け、現場を視察したのが石川氏で、鈴木氏も続いた。両氏とも、被災地には重大な関心を持っており、復興に向けて強い意気込みを見せている。
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