北海道内を舞台にしたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致をめぐり、中国の企業「500ドットコム」が5人の衆院議員に現金各100万円を渡したと供述している事件で1月5日までに全員が受領を否定していることが明らかになった。北海道選出の中村裕之(58)=北海道4区=、船橋利実(59)=比例北海道=の両自民党衆院衆院議員も含まれている。
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発端は昨年12月25日に収賄容疑で逮捕された秋元司議員

ルスツリゾート
今回のIR汚職は、昨年12月25日に秋元司衆院議員(48)=東京15区=が収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕されたことが発端となった。逮捕容疑はIR担当副大臣だった秋元容疑者が、北海道での参入を目指した中国企業から現金300万円、IRの誘致先の一つで後志管内留寿都村の「ルスツリゾートスキー場」への家族旅行費70万円の賄賂を受領したとされる。この際、中国企業が数百万円の現金を不正に日本に持ち込んだ外為法違反にも問われている。
報道によると、秋元容疑者は容疑を否認しているという。自身のSNSなどにも不正に関与していないことを投稿している。特捜部による国会議員の逮捕は、元民主党の小沢一郎代表の資金管理団体「陸山会」による政治資金規正法違反で、2010年1月に逮捕された石川知裕元衆院議員以来だった。
特捜部の捜査で衆院議員5人に現金各100万円を提供したと供述
東京地検特捜部は、贈賄側の「500ドットコム」で副社長を名乗る鄭希=ジェン・シー=(37)、ともに顧問の紺野昌彦(48)、仲里勝憲(47)の3容疑者を逮捕。調べによると、2017年9月28日の衆院解散日に秋元容疑者に300万円、18年2月にルスツリゾートの旅費として70万円を提供した疑い。
3容疑者らは、秋元容疑者以外の5人の衆院議員に現金各100万円を渡したという。時期は17年9月下旬前後という。特捜部では、中国企業が国会議員を通じ、留寿都村でのIR事業参入をもくろみ、便宜を図ってもらおうとしたとして、裏付け捜査を進めている。特捜部でこの5人から任意で事情を聴いている。
【中国企業が現金を渡したという5人の衆院議員】
- 中村 裕之氏(58)=自民、北海道4区
- 船橋 利実氏(59)=自民、比例北海道
- 岩屋 毅氏(62)=自民、大分3区、前防衛相
- 宮崎 政久氏(54)=自民、比例九州
- 下地 幹郎氏(58)=維新、比例九州
5人の衆院議員は関与を否定・違法性はないと認識
中村裕之議員は1月4日、後志管内余市町で記者団の取材に応じ、「政治資金として受け取り、政治資金収支報告書に記載している」と語った。違法性の認識はなかったということを明らかにした。
中村氏によると、17年9月28日の数日前に、留寿都村で「500ドットコム」と関連のあるIR参入を計画していた札幌市内の会社から200万円を受領。100万円を岩屋前防衛相に渡した。岩屋元防衛相は1月4日に大分県別府市内で会見し、中村氏の「政治資金パーティーで講演した謝礼」との認識を示した。両氏とも「500ドットコム」社からの資金だった場合、返金する方針を明らかにしている。
このほか、船橋利実氏は「中国企業側からの政治資金提供はない」と関与を否定。宮崎政久氏は受け取っていないと説明している。下地幹郎氏は記憶にないとしている。特捜部は1月3日、秋元司容疑者の勾留期間を14日までの10日間の延長を決め、引き続き捜査している。
北海道は2021年7月までの国へのIR申請を断念
北海道では2019年11月29日の道議会本会議で、鈴木直道知事(38)がIRの誘致を見送ることを表明した。国への申請は2021年7月だった。誘致を見送った理由は、候補地の苫小牧市(千歳市も含む)が、希少動植物が生息するため、区域認定までの期間中に適切な配慮を行うことが困難としたためだ。
2~3年はかかるとされる環境影響評価(アセスメント)が間に合わないことも念頭にあった。さらに、道議会の最大派閥の自民党・道民会議の足並みがそろわず、意見集約ができなかったことも大きい。道による道民調査もIRを不安視する声が小さくなかった。
21年7月までに申請する地域で認定されるのは、IR実施法で最大3地域。誘致を表明・検討している自治体は、東京(台場)、千葉(幕張)、神奈川(横浜)、愛知(名古屋)、愛知(常滑)、大阪(夢洲)、和歌山(マリーナシティ)、長崎(ハウステンボス)など。最初の区域認定から7年後の28年に見直しを図る予定だ。